2025.10.02
かせ染めには「カセクリ」と呼ばれる巻き上げ作業が必要です。しかし、現在この巻きを行う内職さんは激減しており、かせ染めの現場では大きな課題となっています。なぜなら、かせ染めは人の手による丁寧な作業に支えられているため、担い手の減少は技術の存続にも関わるからです。
「かせ(綛)」とは、糸をぐるぐると束状にまとめたものを指します。英語では Hank(ハンク) と呼ばれます。この状態で染めるのが「かせ染め」です。一方で、糸を筒状に巻いたまま染める方法は「チーズ染色」と言います。つまり、糸の染色方法はこの2つが主流であり、素材や糸の太さ、用途によって使い分けられます。
かせ染めの最大の魅力は「風合い」です。たとえば、ふんわりとした柔らかさや自然な膨らみ、手に触れたときの温かみは、チーズ染色では出しにくい特徴です。特に、ニットやマフラーなど肌に触れる製品では、この風合いの差が大きな価値になります。
多くの糸は仕入れ時にチーズ巻きの状態です。そのため、かせ染色を行うにはまず「綛あげ」という工程で糸を束にまとめる必要があります。
このとき、糸がばらけないようにまとめる補助の糸を「ヒビロ」と呼びます。実際、ヒビロは染め上がった後に糸を巻き直す作業をスムーズにするための重要な役割を持っています。さらに、数本あるヒビロのうち一本には、巻き始め(表)と巻き終わり(裏)の糸端が止められています。これにより、どこが始まりでどこが終わりかがすぐにわかり、後工程での作業効率が大きく向上します。
綛あげやヒビロの処理は機械化が難しく、したがって今もなお職人の手に頼る部分が大きい工程です。
かせ染めの良さは、この丁寧な作業の積み重ねから生まれます。しかし、巻きを担う人が減っている現状を考えると、この技術を守り伝えていくことの重要性を強く感じます。
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